映画『5時から7時までのクレオ』ネタバレ感想/いのちに触れる2時間

3 min
パリの街並み

こんにちは、なな子(@nnk__1105)です。

今回はアニエス・ヴァルダ監督の『5時から7時までのクレオ』を鑑賞しました。主人公・クレオの生体組織検査の結果を待つ間の2時間をリアルタイムで描くスタイルと、ラストの描き方がおもしろかったので今回はレビューをしていこうと思います。

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『5時から7時までのクレオ』あらすじ

シャンソン歌手のクレオは占い館を訪れる。彼女は今日生体組織検査の結果が出て、癌か同課が判明するのだ。占いの結果は芳しくなく、クレオは店をあとにする。付き添いのアンジェールとカフェで落ち合い、自宅へ向かう。恋人が短時間の逢瀬に来て、仕事仲間と歌のレッスンをし、その間にも彼女の気分は目まぐるしく変化する。彼女は一人で家を飛び出し、7時に病院へ行くまであてのない散歩をするが──

『5時から7時までのクレオ』感想

以下、ネタバレを含みます。未視聴でネタバレが苦手な方はご注意ください。

クレオの死への向き合い方

もし、わたしがクレオだったら、癌の宣告を待つ2時間こんなに人や外の世界と触れ合って、感情を動かすことはできないだろう。病院に行くまでの時間ベッドの上で足を抱えて泣くことしかできないはずだ。

しかしクレオは違うのだ。恋人の突然の訪問にも普段通りの態度で応え、仕事仲間との歌のレッスンで華やかに歌い、かと思えばこんな歌歌わせないで! と激昂する。ひとりで家を飛び出し、カフェで自分の音楽をかけてみる。

このカフェでのシークエンスが特にすばらしく、この映画、途中途中に「×時から×時までのクレオ」という風に字幕が出るのだが、このカフェシーンだけは「他の人びと」とその他大勢を描くのだ。死への恐怖と孤独感で心がささくれだっているクレアは、他の客たちのなんてことはない会話に耳を澄ませる。そうして剥き出しの心は普通に健康な人たちの世間話ですら傷つき、彼女はカフェをあとにする。わたしも精神的にまいってしまうことが多いので……このときのクレアほどではないと思うが……、そういう繊細なときに雑踏や街で生きる人の声で泣きそうなくらい孤独になることがある。そういった心情を描くにあたって、この演出はこれ以上ないほど適切だった。

カフェをあとにしたクレオは、友達がモデルをしているアトリエへ出向く。友人と落ち合い、彼女が恋人から借りたという車に乗って恋人が働く映画館へ向かう。友達にも癌かもしれないということを打ち明けるが、アンジェールや仕事仲間がそうであったように、心配はしてくれても本気で受け止めてくれない。彼女はそれに気づいてしまって、友達に「家まで送るわ」と言って別れる。

そうしてタクシーで公園へ行き、そこで兵士のアントワーヌと出会うのだ。

アントワーヌとの出会い

クレオにとって、アントワーヌは最初口数の多いナンパ男の一人にしか映っていなかった。しかし彼もまた兵士としてすぐに原隊に戻ってアルジェリアで死と直面する立場だということを知って、彼女の彼を見る目が変わったのだ。アントワーヌはクレオの周りの誰よりも彼女の死への恐怖に寄り添い、一緒に病院へ結果を聞きにいこうと言い出す。

クレオにとってのアントワーヌが軽薄な男から一変するところの心理描写がよかった。誰も真剣に取り合ってくれない死への恐怖に常に面している彼は、誰よりもその怖さがわかる。クレオがアントワーヌに出会えてよかった、と思った。

ラストについて

この映画で一番目を引く、しかしあっさりとしているのがラストのシークエンスである。

ラスト、ふたりで病院へ向かうと受付の男にクレオの担当医はすでに帰ったと言われてしまう。今日が夏至だから夕刻の時間感覚が入れ違っていたのだ。しかしクレオは「約束をしたんだから絶対に来てくれるはずだわ」と医師を待つことに決める。アントワーヌも同行すると言ってくれたが、彼が乗る汽車は8時前に出る。それを知ったクレオが結果は後で電話をすればいい、残りの1時間はあなたの過ごしたいように一緒に過ごす、と言うと一台の車が通りかかる。

乗っていたのは担当医で、医者は「明日から治療を開始します。放射線治療は辛いですががんばれば必ず治ります」と言ってそのまま去る。彼女は癌だったのだ。わたしは、映画の描き方的にクレオが一喜一憂していただけで癌でもなんでもなかったでした、というオチだと思っていたので、さも当然のように癌だと宣告もされず、治療方針を言われるだけというこのシークエンスには度肝を抜かれた。

しかし自分が癌だと知ったクレオは劇中でいちばん安心したような、晴れ晴れとした笑顔を見せる。ここで映画が終わる。

クレオが死を受け入れた訳ではないとわたしは解釈した。クレオはアントワーヌと出会い、彼が生を全うしているうちは自分も苦しい治療を受けようと決心したのではないだろか。クレオがアントワーヌに住所を訪ねる……おそらく手紙を出すのだろう……シークエンスがあるが、彼女はこのときにはじめてこの先も生きる前提の約束を交わしたのだ。

まとめ

偶然にも、夏至の前日に夏至の1日を描いたこの作品を観たことを、わたしはずっと覚えているんだろうな、と思いました。意図せずドラマチックな経験に出会ったとき、クラクラしてしまいます。明日はちょうど夏至ですし、明日の長い1日のお供にもオススメの映画です。

それでは、また次の記事でお会いしましょう。

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なな子

なな子

なな×ロマを運営しているなな子です。文学とあたたかいお茶と高所が好き。
日常をちょっと豊かにするブログとしてあなたの毎日に寄り添えたらうれしいです。

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